小さな光 ~月と太陽~
1歩づつあたしに近づいてくる藤。


こんな所で別れ話?



『嫌いになった』

『好きじゃない』

そう言うの?



あたしの目には少しずつ涙が溜まる。


藤に背中を向けているからあたしの涙には気付いていないはず…


「アズ…」


近くで名を呼ばれたと思ったら


「いい加減、俺の話を聞けっ!
この、アホが」


少し弱そうな声を出してあたしを後ろから抱き締めた。


あたしは全く抵抗せずにただ藤に抱き締められている。


物音ひとつしないこの静かな場所にあたしと藤の息づかいが聞こえる。



けど最初に口を開いたのは藤。


「急にこんなところに呼び出して悪かった。

俺の話を聞いてくれるか?」


「うん…」


あたしを絶対に逃がさないように強く抱き締めている。





――――――この腕から離れたくない…










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