小さな光 ~月と太陽~
この事をはっきりさせなければあたしは全然スッキリしない。


「ねえ、誰なの?」


「それは…」



ここまできてもまだ藤は『さくらさん』の存在をあたしに隠そうとする。


………………隠されていい気分はしない。


もう、こんなの嫌だ。



「離してよ、離してっ」



さくらさんを隠している藤に抱き締められていたってただ自分が惨めで悲しくなる。


藤の腕の中で抵抗したが全く通用しない。



「わかった、わかったから暴れるな。
隠さず全部話すから…」


「ヤダヤだ、聞きたくない。
藤なんて知らない」


「梓っ!」



頭上からさっきよりも大きな声がした。


その声の大きさに驚いたあたしは大人しくなる。




「頼むから、“ヤダ”とか言うなよ…

俺だって傷つくんだからな」



弱々しい声。


いつもの藤じゃない。













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