小さな光 ~月と太陽~
「はっ?」


『さくら』じゃなくて『佐倉』


「アズが言っている“さくらさん”って言うのは“佐倉さん”な訳」


佐倉さんなら…

女の人か男の人か分からない。



「“佐倉さん”っていうのは俺を預かってもらっていた家の長女」


「藤の、お姉さん?」


「まっ、そんなとこかな」



今まで藤が育ってきた家の事を聞いた覚えがない。


ただ特別扱いが嫌だった事しか聞いていない。



「藤は“浮気”をしていた訳じゃ「無い」


「つーか、ぜってぇ俺には無理。
前も言ったけど俺には“梓しかいない”」


真っ直ぐあたしを見てくれるその目に『嘘』は無いと確信した。



「藤…ごめんね」


「どうして?」



あんなにもヒドイ事を沢山言ったのに…
藤はあたしを全く責めずに、指であたしの髪を優しくいじりながら聞いている。












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