ルーンクレスト
ほとんど疑問に思ったまま声は聞こえなくなった。
「誰だったの?」
でも、これでセレッソの街の扉が開く。
不思議とそう思った。
一歩、踏み出した時。
『堕天し己にそむきし者には罰則を。希望を求めし者には希望を』
そう、どこからか聞こえた。
「希望を、求めし者には希望を」
そう、小さい声で呟く。
そして、いったん目を閉じゆっくり開く。
そこにはあった。
宝石で装飾された巣くらい炉の大きい扉が。
扉がゆっくり開いていくと、風が、たくさんの風が吹いてきた。
その風は甘いにおいがする。
私は何かに誘われるように、一歩一歩扉に向かって歩いて行く。
『まだ、知る時ではない』
誰かの―――さっきの声がまた聞こえた。
そして、風に奪われたように、私の意識は―――消えた。
……この声は……いったい誰なの……?
どこかで、聞いたような懐かしい声。
でも……思いだせない。