君に、溢れるほどの花を
日常の終焉は、涼やかな音に告げられる
「―――」
(・・・・・・?)
出窓に座って、ぼんやりと窓の外を見るともなしに見ていた雨流(うる)は、だれかに呼ばれた気がして、ぼうっとしていた意識を浮上させた。
振り返って周囲を見回してみるが、だれもいない。
本で溢れるいつもの光景が目に入るばかりで。
(・・・気のせい・・・?)
まあ、いいか、ととくに気にせず持っていた本に目を落とす。
ここに来てからまだ一ページも読み進められていなかった。
(はあ、今日はもう無理かな)
雨流は本を読むのを諦め、しおりを挟んで閉じようとした。
そのとき、また声が聞こえた。
しかし、今度はさっきと違いはっきりとした声で、聞き覚えのある声だった。
「雨流?・・・ああ、よかった。やっぱりここにいたか」
本棚の向こうから姿を現したのは、背の高い女性だった。
彼女の名前は、九条 咲月(くじょう さつき)。
雨流の母方の従姉で、この場所――丘の上の図書館の管理人をしている。
さばさばした性格の彼女は、雨流にとって、親族の中で唯一心許せる存在だった。
まあ、少し、というより大分変わっていて、謎の多い人ではあるけれど。
(・・・・・・?)
出窓に座って、ぼんやりと窓の外を見るともなしに見ていた雨流(うる)は、だれかに呼ばれた気がして、ぼうっとしていた意識を浮上させた。
振り返って周囲を見回してみるが、だれもいない。
本で溢れるいつもの光景が目に入るばかりで。
(・・・気のせい・・・?)
まあ、いいか、ととくに気にせず持っていた本に目を落とす。
ここに来てからまだ一ページも読み進められていなかった。
(はあ、今日はもう無理かな)
雨流は本を読むのを諦め、しおりを挟んで閉じようとした。
そのとき、また声が聞こえた。
しかし、今度はさっきと違いはっきりとした声で、聞き覚えのある声だった。
「雨流?・・・ああ、よかった。やっぱりここにいたか」
本棚の向こうから姿を現したのは、背の高い女性だった。
彼女の名前は、九条 咲月(くじょう さつき)。
雨流の母方の従姉で、この場所――丘の上の図書館の管理人をしている。
さばさばした性格の彼女は、雨流にとって、親族の中で唯一心許せる存在だった。
まあ、少し、というより大分変わっていて、謎の多い人ではあるけれど。