水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
警察車両からは、
交通課の刑事に頼み込んで、
一緒に駆けつけてきた親父の姿。
「氷雨っ!!
大丈夫か?」
慌てて駆けつけた親父は、
間抜けにも……シャツのボタンを
掛け違えたままで。
「悪い、親父」
「それより、お前はどうなんだ?」
「オレは平気。
授業の受け身が功を奏したよ。
それよりコイツ、
春宮妃彩って名前なんだけど、
こいつが問題かな。
トラック運転したのは、
今電話してる、あのおっさん」
「わかった。
伝えておくよ。
春宮さんは、
救急車で搬送する方がよさそうだな。
持ち物に身分証明はなかったか?」
そう言いながら、
親父は彼女の鞄をあさっていく。
親父から取り出された、
身体障害者手帳。
そこに記された、連絡先は
この坂の上にある介護ホームだった。
「親父、オレが
救急車にのってくよ。
受け身とったとはいえ、
打ち身してる部分あるし、
湿布薬くらい出してくれんだろ」
そう言ったオレに
親父は財布の中から福沢諭吉を
数枚手渡す。
「サンキュー」
そのまま、彼女と一緒に
救急車へと乗り込むと、
救急車は多久馬総合病院へと走り出す。
辿りついた途端、ストレッチャーに乗せられて、
慌ただしく処置室に運び込まれた彼女が
検査や処置を終えて、病室に移動したのは……
数時間後。
お昼を少し回った頃だった。
「氷雨」
一人、病院のロビーで待ち続けるオレに
顔を見せたのは、
時雨と兄貴の親友、氷室由貴(ひむろ ゆき)。
そして……
早城飛翔(はやしろ ひしょう)。
「おいおいっ、
兄貴の友人、勢揃いかよ。
受験勉強はいいのかよ。
今日は図書館で1日じゃなかったのか?」
「氷雨。
そんなこといっていいんですか?
貴方が今日やる仕事、
連絡を受けて代わってあげたのは
誰だと思うんですか?」
そう言って、悪戯な笑みを浮かべるのは
氷室由貴。