水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
23.紅蓮 ~ダチ~ -氷雨-
オレが取引現場を目撃して、
一月以上。
調べるのに時間がかかりすぎて、
慎重になりすぎて、動けなかったから
悠美さんは死んだかもしれない。
もっとオレが前面に動いて、
早期解決へと動くことが出来てたら。
葬儀の間も、自分を責めるような感情が
幾度となく押し寄せてきた。
沈黙が広がるエスカルゴ館内。
オレは携帯を取り出して、
朔良さんのナンバーを呼び出した。
「もしもし」
「朔良さん……。
後を頼みます」
ただその一言だけを告げて、
電話を切ると、
妃彩の写真を表示させた。
コイツの笑顔も守りてぇから。
机にあるパソコンを引き寄せて、
その場で『ナイトメア』の事件に関する
情報の全てに再度目を通す。
こんなにも犠牲になった奴がいるのに、
親父ら警察は、手をこまねいてる。
全てを公表することないままに。
憧れと夢が、
オレの中で崩壊していく。
ノーパソをそのままゆっくりと閉じると、
オレは覚悟を決めたようにソファ-から立ち上がった。
「氷雨さん」
「氷雨」
立ち上がったオレに声をかけるのは、
優と有政。
二人もオレに続くように、
立ち上がる。
有政の腕の中には、
包まれるように過ごす南緒も
オレをじっと見つめる。