水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
「氷雨」
幹部室のドアノブに手をかけた時、
外側からのドアが開かれて、
浩太の声が聞こえた。
浩太の身に着けた特攻服。
「お前……」
「氷雨さん、行くんですよね。
俺も行きますから」
そうやって浩太は、特攻服のまま
オレのサイドに立つ。。
一人で行くつもりだったが、
コイツらは、そうはさせてくれなさそうだ。
何、必死になってたんだろうな。
空回りして。
コイツらがオレだけに守られてるだけの器じゃねぇってことは
オレが一番知ってたじゃねぇか。
目を伏せて、
深呼吸を一つ吐き出す。
「お前ら、行くぞ。
悠美の追悼供養だ」
「後は、氷雨のイヴのデートの為に」
オレの言葉の後に、
気を抜ける言葉を付け足したのは浩太。
浩太がイヴを一緒に過ごすはずの悠美は
もうこの世にはいない。
大切なものを失った浩太の言葉は
ズッシリとオレに突き刺さった。
この場にいる有政と浩太は、
すでに幹部としての戦闘服である
特攻服を身に着ける。
「氷雨さん、氷雨さんも今日はこれを」
そう言ってクローゼットをあけて、
優が見せるのは、紅蓮の総長【あたま】としての特攻服【証】。
受け取ると、オレは氷雨さんから手渡された、
様々な想いが重く込められた、それを身にまとう。
鳳凰を背負うと、
輝樹が幹部室の扉をゆっくりと開いた。
特攻服をまとう、オレが最初に踏み出すと
その隣を同じく特攻服姿の、有政と浩太が立ち
二人の後ろに、更に優と輝樹が控えた。
オレたちにとっての正装で姿を見せた途端、
階下にいるチームの奴らが緊張感を高めながら静まり返る。