水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
オレ自身の為にも……。
その後、一斉にエスカルゴを
飛び出していく仲間たちは、
それぞれの持ち場へと散って行った。
「氷雨さん、んじゃ
俺らも行きますか?」
優の言葉で、
動き出すオレたち。
寄せられた情報の中で、
一番危険そうな場所選んだ。
暴力団の高嶋のシマに一番近い
目撃場所。
「有政、お前は南緒と一緒に、
全ての奴らを統括してくれ。
管制頼んだぞ。
浩太、お前はもう1か所の危険な方へ
行ってくれるか?
輝樹、悪いが浩太に付き合ってやってくれ」
指示通りに、頷いた浩太は気合いを入れるように
両手の拳を胸元で合わせた。
輝樹もまた優とアイコンタクトをとって
無言で浩太の背後へと付き従う。
「わかった。
氷雨も、無理するな」
有政の一言に、
最後にエスカルゴを飛び出していく。
そのままGPSを常に発信するように
携帯を操作して、『今から行きます』っと
朔良さんにだけメールを送信した。
高嶋のシマに一番近い、その目的の場所に付いた時、
オレと優の姿を見て手招きする、学生服の男女が一人ずつ。
「紅蓮の氷雨さんですよね。
あれっ、あそこなんです。
さっきから、那賀(なか)高の制服の奴が
中坊にやってるんですよ。
中坊は逃げたそうなんですけど、
逃げ切ることが出来てなくて」
言われるままに、
影から息を潜めて見つめる。
「有難う。
後は俺らに任せて、
気を付けて帰って」
「はっ……はいっ。
ウチのダチも、
この間亡くなったんです。
遺書もなくて、サツには
自殺って言われました。
でも……アタシは、
アイツが自殺なんてするようには思えなくて。
そんな時、紅蓮がその一連の事件を調べ始めたって
聞いたんです。
お願いします。
ダチの敵、とってください。
アタシに出来ることは何でもするから」
オレを真っ直ぐに見つめて、
縋るように行ってくる女を男は落ち着かせるように
慰めながら、その場所を離れて行った。
「氷雨さん。
今、渡しました」
「あぁ、渡したな」
ブツを手渡されたのを確認して、
そのまま、優と二人飛び出していく。