水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
だけど同時にオレの脳裏に浮かぶ、
大切なアイツが殺される映像。
そっちの方が、
オレには耐えられない。
そのまま携帯の電源をオフにして、
オレは親父の後を追いかけて行った。
「親父」
声をかけたオレに、
親父の雰囲気は一気に張りつめた。
「氷雨、
何でここに居る」
「ここに居るじゃねえって。
親父、何?
アイツ、高嶋連合の構成員だろ」
息を潜めながら、
親父に話返すオレ。
「氷雨、首を突っ込むな。
早く離れろ。
母さんが心配する。
それに……過ごさないのか?
春宮さんだったか……。
車椅子の彼女と。
付き合っているんだろう」
そう言った親父の言葉に
驚きを隠せなかった。
家庭の事なんて顧みる暇もないっと
思ってた親父が、
そんなことまで知ってる事実。
「そうだよ。
オレは妃彩と付き合ってる。
だから……かな。
安心して逢いたいんだよ。
オレが帰らなかった時期も、
大学病院で親父とあった時から
ずっと大切な奴を守りたくて必死だった。
親父……オレ、見たんだ。
アイツラが薬をさばいてる現場。
取引現場に居合わせて車で轢き殺されかけた。
そんな状態で、
親父なら自宅に帰れるか?」
「その間、何処に居たんだ」
「後輩の自宅。
親父も知ってるだろ。
九紋連合の氷見組。
そこに組長さんに世話になってた。
後輩の親父さんなんだ。
そこには先輩も世話になってるから」
そう言ったオレに、
親父は真剣に向き直って溜息をついた。