水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「ったく。

 ガキだと思ってた氷雨も、
 いつの間にか俺の背中を追いかけやがって。

 
 ただ危険だぞ。

 だが事情がわかった以上、
 俺もお前を一人で帰すわけにはいかない。


 はぐれるなよ」




親父と二人、同じ方向を見据えて、
物陰から、物陰へと移動していく。




「親父、アイツ誰だろ」 
 






オレが目撃したソイツに近づいてくる
スーツ姿のもう一人の男。





ソイツの姿を確認した途端、
親父が、怒りに任せるように
静かに握り拳を震わせた。




「親父……知り合いか……」



「氷雨、俺はあの現場を現行犯で押さえる。

 お前が見た奴の隣には居るのは、
 同僚の刑事だよ。

 
 仲西徳志(なかにし とくし)。

 
 お前はその取引現場を携帯に収めて
 米田(よねだ)の親父さんを訪ねてくれ」




震えそうになる手で、
携帯の電源を入れてその状況を撮影する。




「行けっ、氷雨。

 他の警察官ではなく、
 必ず、米田の親父さんに」






父さんはそのままオレの背中を反対側に押し出して
取引現場の方へと向かっていく。





鳴り響く銃声。






「親父っ!!」





溜まらなくなって、
振り返って叫ぶオレ。
 





「行けっ!!
 俺に構うな」





そうやって
怒鳴り返す親父の体に
何度も打ち込まれる拳。


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