水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


ただ……純粋に、
私を見てくれて、温もりをくれる人が欲しかった。


ただ……そんな些細な温もりに憧れることすら
今の私には許されないの?


そう思うと息苦しくて悲しくなった。



悲しくなってきた心を隠すように、
いつものように掛布団を
顔まですっぽり引き上げようとする。


なのにどれだけ引っ張っても、
掛布団は引き上げられない。

慌てて手を伸ばした右手に、
柔らかいモノが触れる。



えっ?
髪?



戸惑う私に、
そっと掠れた声が降り注ぐ。



「起きたのかよ」


ちょっと乱暴な口調で
問われた言葉。



「……うん……。
 貴方、誰?」


思い切って、
問い直す。


「オレ?
 
 氷雨。
 金城氷雨。
 
 一週間前に自己紹介したぞ」



一週間前?


「まだ遅いから、
 もうちょっと寝てろ。
 ちゃんと
 朝まで居てやるから」



そう言うと、
その人は、掛布団をかけなおして
そのまま私の髪を
くしゃくしゃっと撫でつけた。



その仕草が……
とても優しくて、懐かしくて……
恋しくて。




ゆっくりと、その温もりを求めるように
眠りの淵へと誘われていった。




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