水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
その度に、
「氷雨。そろそろ家にも顔出せよ。
母さんが心配してるよ」
「おいっ。
何を考えてる?」
「何が氷雨をそこまで掻き立てるのかな?」
訪れるたびに、
三人が思い思いに、言いたい放題告げて帰る。
そんなもん、俺が聞きてぇよ。
今の俺の状態に一番困惑してるんのは
俺自身なんだからよー。
アイツらが何を言っても、
この場所に縛り付けられ、捕らわれたみたいな俺は
動くことが出来なかった。
『ちえっ。いったい……なんなんだよ』
結局、悶々と一睡も出来ぬまま
窓越しに朝日が昇りはじめる。
窓を少し開けると、
朝の風がゆっくりと入り込んでくる。
「んっ……んん~」
もぞもぞっとベッドが動いて、
ゆっくりと瞳が開かれる。
じーっと、俺を見つめる瞳。
そして、ソイツは、何も言わずに
そのまま掛布団を引き上げて顔を隠した。
何も答えずに、
だまってモグラが土から出てくるのを待つように
デコピンの準備をして息を潜める。
そんな俺に気が付かず、
ゆっくりと顔を覗かせたところで、
一発。
「痛いっ!!」
おでこを両手で押さえて、
睨みつける……。
「おぉ、モグラが出て来たじゃねぇか。
ったく、心配かけやがって。
お前は、どこかの国の童話の姫か?
なんだっけ?
シンデレラ」
あぁ、もう、わけわかんねぇー。
「違うよ。
シンデレラは、魔法使いさんに助けられて幸せになるの。
眠り続けるのは、オーロラ姫。
眠りの森の美女だよ」
こんな些細なことに、目くじら立てるように
ほっぺを膨らませて俺を睨みつけながら向かってくる。