水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

「おぉ、オーロラかなんだか、知らねぇが
 オーロラなら北極か南極にでも見に行きやがれ」

俺がそう怒鳴った途端、
ソイツはキョトンとしたように固まった。


ヤベッ。

コイツ……車椅子かっ……。
簡単に出掛けるなんて出来やしねぇんだよな。


気まずい雰囲気が漂って、
俺もどう切り替えしていいかわからなかったとき、
救世主がドアを開く。

おっ、ヤリィ。



ガラガラっと扉が開く音が聞こえて
顔を覗かせたのは、
毎日様子を見に来てた担当ナース。


「おはよう。
 妃彩ちゃん、久しぶりね。
 今朝の目覚めはいかが?」


手慣れた雰囲気で、
体温や血圧を確認して記入していく。 


「君もずっと居てくれたんだね。
 ずっと、気になってたんだけど
 君は、妃彩ちゃんの彼氏さん?」


はいっ?

どこをどう飛躍したら、
俺はコイツの彼氏になんだよ。


いやっ、でもマテ。

一週間も病室に泊まり込んでたら
そうもなるのか……。


「あっ……名札。
 愛美さん……」


ようやく呟いたかと思えば、
その名前を小さく紡ぐ。


愛美さん?
誰だよ、ソイツ。


「そうよ。妃彩ちゃん、久しぶりよね。
 貴女が運び込まれてきた時は
 私もびっくりしたわよ」


知り合いか?
こいつら?


「えっと……。
 彼は……金城氷雨さん……」

「うん。金城くんって言うのね。
 それで?」

「……うん……」

「うんって?続きは?
 妃彩ちゃんの良い人?」


その質問に対しては、 
寂しそうに眼を伏せて、
ただ黙って首を横に振った。


そうだよなー。

出逢って一週間。
言葉交わして、24時間も経ってねぇし。

そんなこと思いながらも、
ズキンと心に痛みが広がるのは
何故なんだろう。

「んで、君はどうしてここに居るの?
 ここは女の子の部屋だよ。
 彼氏でもないのに、
 この場に居るのって……
 看護師としては、見過ごせないんだけど」


向き直った、担当看護師は睨んだまま
問い詰めるように言葉を続ける。

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