水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
7.冷たい空間 -妃彩-
人なんて嫌い。
優しさなんて嫌い。
温もりを知ってしまうと、
その後の孤独がとても辛すぎて。
お父さんとお母さんの時に、
その孤独を知ったはずなのに。
その辛さも痛みも嫌って言うほど、
わかっていたはずなのに、
私はまた……あの人に心を許してしまった。
あの人と私の住む世界は違ってる。
私は、あの人が輝く
太陽のような光の世界に
飛び出していくことなんて叶わないのに。
氷雨楽しい時間を屋上で過ごした次の日、
突然、私の前に現れたのは施設のスタッフ。
『病院から連絡があり、
迎えに参りました。
すでに退院手続きは完了しています』
義務的なその言葉の後、氷雨が訪ねてくるのを
待つことも叶わないまま施設の車へと乗せられて、
車椅子を固定された。
辿り着いた施設の車から降ろされた私が
入ったその場所は、今まで以上に居心地の悪い空間だった。
「春宮さん、只今戻りました」
スタッフさんがそう言って私の車椅子を押しながら
施設の廊下を移動していく。
浴びせられるのは、突き刺さる視線と
蔑む眼差し。
居心地の悪さに思わず顔を下に向ける。
「今日から、
こちらが春宮さんのお部屋になります」
そう言って、私を迎えにきたスタッフが扉を開けたのは
今までとは違う部屋。
これまでの車椅子でいろんなことを自由に行き来出来た空間と違って
今回、私の部屋にあてがわれたのは、牢獄のような空間。
部屋の鍵は、内側からではなく人からかけられ、
填め込みタイプの硝子窓から太陽の光は降り注ぐものの、
窓を開けることが出来ない閉ざされた空間。
トイレもお風呂も、ベッドも机もクローゼットも
生きていくために必要な、
今までと同じ家具が揃っていて住むことには不自由がない空間。
だけどその場所は、閉ざされた空間。
部屋の四隅には、部屋の何処に居ても
私の行動が監視できるカメラが設置されていて、
この部屋から出入りする一つしかない扉は
外からの鍵がかけられて、スタッフのみが管理する。