水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
浩太こと、瀬口浩太【せぐつ こうた】も
オレたち紅蓮には幹部と言われる存在の一人。
浩太の兄貴である、瀬口先輩は先代総長の片腕を担っていた人で
今もバイクパーツの件とか、チューンの相談に乗って貰っている
心強い存在。
有政と二人、電車に乗って
授業開始前の、閉門スレスレの時間に滑り込むように入ると
オレたちはそれぞれの教室へと向かった。
かったるい授業を適当にやり過ごして、
休みの時間になると、
この学校に居る紅蓮の仲間たちは、
オレがいる教室へと集まってくる。
「なぁ、氷雨。
お前、最近おかしくねぇ?
集会の時も、気合入ってねぇだろ。
確かに、お前のバイクまだ修理中だけど
それでも何時ものお前らしくねぇよ。
今朝は何も言わなかったけど、
浩太も気にしてたぞ」
そうやって最初に切り込んでくるのは、
有政。
「かもしんねぇな。
らしくねぇよな。
らしくねぇよ」
言い聞かせるように繰り返す言葉。
「優が言ってたんだよな。
氷雨に女が出来てるかもって。
病院に何度も見舞いに行ってたんだろ。
ソイツとうまくいってないのか?」
なんて話題は、オレの女探り。
『あの馬鹿野郎がっ……』
心の中で、後輩の優を思い描いては
一発後で食らわそうなんて考えながら
ヤツラが諦めてくれるのを……
チャイムが話題を
強制終了させてくれるのを待ち続ける。
出逢った事故の日。
確かにアイツが暮らしていたのは、
事故現場の真上の、施設だった。
屋上でアイツと楽しんで
ダチになると話した翌日。
いつものように多久馬に向かうと、
アイツが居た病室は蛻の殻だった。
施設のスタッフが迎えに来て、
アイツを退院させた。
アイツの担当ナースが
そう言った言葉を受けて、
その場で、アイツが居るはずの
施設へと押しかけた。
受付で「春宮妃彩に逢いたい」っと
告げても、施設のスタッフが返す言葉は
誰に聞いても変わらなかった。
『当施設に、春宮妃彩と言うモノは
おりません。
どうぞ、お引き取りください』。
あの日から、言われ続ける日々。