水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
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いいですか?
このTVは○○建設様の善意で
購入することが出来ました。
この野菜は、近隣農家の○○様の善意で
頂くことが出来ました。
この○○は……
この○○は……。
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食事前に、
聞かされ続けた養護施設時代。
言われ続けた食事も、
安っぽいプラスチックの茶碗やお皿に
無造作に盛られて温もりすら感じられない。
この施設で暮らす時間は、
そんな時間を連想させる。
この場所での食事時間は、
私の心を卑屈にさせていく時間。
残そうとするとヒステリックに、
担当のお姉さんが近づいてくるので
味もわからないままに
何とか飲み込むと、
逃げるように自分の部屋に戻った。
お父さんとお母さんと私。
3人の幸せだった頃の写真を
洋服の中に忍ばせる。
机の上にはいつもと同じ
(お散歩してきます)。
お出かけ文句を綴った
紙切れをおいて。
そっと……車椅子の車輪を回す。
誰にもばれないように祈りながら。
全てを終わらせたくて飛び出すのに
途中で誰かにばれちやったら、
私の願いは聞き届けられない。
お散歩は出来ても、息抜きも出来なければ、
今日の目的も果たせないから。
思わず身を屈めながら、
手だけは車輪を回し続けて、
施設の玄関まで
一目散に車椅子で駆け抜ける。