水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

9.秘密 -由貴-



二学期が始まって、二週間ほどが過ぎた。

二学期が始まった途端に、
10月の体育祭の準備に慌ただしくなる生徒会。


時雨は生徒会長として、運営業務にも慌ただしくなりながら
学校が終わったら、自宅で相変わらずの猛勉強の日々。



『夢』を描き切れる人が、
どんどんと将来設計をして活発に受験の準備を始めていく中
私だけは今も流されるように、学校での時間やり過ごしていた。


学校では優等生で、将来の夢も確実に描けた存在。


そんな仮面を被り続けながら、
時雨や飛翔らに求められるまま、
私自身の出来ることを成し続けていた。


そんなある日、その日はバイトで……
時間的に、あの天使の歌声が聴けたその日と時間が被っていたため
バイトを理由に、時雨と飛翔に断りを入れて
一足先に学校を後にした。


金城の小母さんにも、
今日はバイトで遅くなる日だと伝えてある。


学院の門を出て、何時もと逆方向の電車に乗ると
バイト先の最寄り駅へと移動を済ませた。


駅からバイト先へと向かう、公園の奥の飴色の建物。


まだまだ残暑が厳しいからか、
せっかくの公園のベンチにも今は人は存在しない。


近くの自販機でベットボトルのスポーツドリンクを購入すると
渇いた喉へと一気に流し込む。


喉を潤した後は、
深呼吸をして再びあの飴色の建物のドアを開いた。



その部屋は今はパイプオルガンの音色に静かに包まれていた。

重厚なパイプオルガンの音色が重なりあい、
奏でるのは、バッハの調べ。



その音色がする方へとゆっくりと歩いていくと、
その場所が、教会であることを初めて知った。


この間は、ただ天使の歌声に
聴き入ることに必死だったから。



パイプオルガンの音色が途切れると、
私が入ったドアとは違う、もう一つのドアから
沢山の人が姿を見せる。

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