水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
高嶋って暴力団が絡んでるかもしれない
妃彩の居る施設。
単身で乗り込んで、
アイツを救い出すには、証拠がなさすぎてリスクが高い。
かといって、オレ自身が放置なんて出来ない。
エスカルゴに迎う途中、
わざとアイツが居るはずの施設の前を通ってバイクを止めると
暫く敷地内の建物を見つめる。
*
妃彩、お前今何してる?
*
知らない間にオレの中で膨らんでいる
アイツへの思いを抱きしめる。
「氷雨さん、お疲れ様です」
「氷雨さん」
「氷雨さん」
エスカルゴの周辺に行くと、
入りきらないバイクと共に、
チームの奴らが、次々とオレに挨拶をしてくる。
「悪いな、遅くなって」
「氷雨さん、久しぶりに氷雨さんのバイクみました。
なおったんすね」
一斉に取り囲んでくるチームの奴らは、
次々と修理を終えたバイクに意識を向けていく。
「氷雨、お疲れ。
奥に、朔良さんが来てる。
氷雨に用事だって」
「悪い有政」
「オレ、朔良さんとこにいくからバイク頼むわ」
その場にいた子に声をかけて、
任せると、オレは2階へと続く階段を登った。
「氷雨、お疲れさん。
ちょっと今から流して来る。
有政も行くだろ。
優、輝樹下の奴ら、まとめてきてくれ」
そう言って浩太が、1階へと降りていく。
「氷雨と走るのは今度。
んじゃ、流しに行くよ」
有政が声をかけると、
一斉にエンジンをふかし始めたバイクが
一台、一台と遠のいていくのを感じる。
「氷雨、市春のところでバイクなおしてきたんだね」
「はいっ。
いいようにしていただきました」
「さて、優から相談されてる件について
直接、氷雨から聞きたくてね。
可愛い弟の為に動くのは、
兄貴分としては当然だろう?」
そう言いながら、朔良さんは
鞄の中からノートパソコンを立ち上げた。
目の前にいる、この人から
オレは紅蓮の7代目総長と言うポジションを受け継いだ。
だけどオレにとっては、
出逢ったときから、いつも憧れの対象で
今は……尊敬すら覚える偉大過ぎる存在。