水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
「さて、優の話だと8月の事故以来ってことだけど
詳しく話して貰おうか?」
そんな形で切り出した、朔良さんの誘導尋問にのせられるように
オレは、ここ暫くの洗いざらいをぶちまけていた。
夏休み、妃彩に出逢った事故のあの日から
多久馬総合病院を退院する日まで通い続けたこと。
退院後、行方がわからなくなったこと。
だけど、坂の上のあの施設が唯一の手がかりだという事。
近辺の施設に連絡をしても、
妃彩が転院した形跡は何処にもなかったこと。
吐き出すように、絞り出すように
彼女とのことを語ったオレに、
朔良さんは黙って耳を傾けてくれて、
話し終わった後、昔……ガキ過ぎるオレを
嗜めてくれたみたいに……
トントンと肩を指先で叩いた。
「朔良さん」
「優から聞いてた内容で、まぁ正解だったみたいだな。
それじゃ、私からは一つ情報を」
そう言ってテーブルに開かれた、ノートパソコンに
何かのメモリーをさしてキーボードを弾くと、
ノートパソコンから、割れた音声が聴こえはじめる。
その音声は『氷雨』っとオレの名を呼ぶ声が入っていて
思わず、ノートパソコンを眺める。
「妃彩……。
チクショーっ、アイツら。いるんじゃねぇか」
八つ当たりするように、
ソファ-から立ち上がって、壁に拳を打ち込む。
映像に映る妃彩は、
何処かの部屋に閉じ込められているみたいで、
ベッドの上で、ぐったりと横たわっているみたいだった。
「氷雨、後三日。
後三日、待ってほしい。
春宮さんのことは悪いようにはしない。
ただ無防備に動いても事態は悪化する」
「市春さんが言ってました。
高嶋が繋がってるって」
「その辺もいろいろと事情があるんだよ。
蛇の道は蛇。
うちの仕事がら、
そう言う繋がりも出てくるからね」
朔良さんが告げた仕事が、
氷見を言うのか、桜ノ宮を指すのかオレにはわからなかったけど
オレ一人があがいても、どうにもならないことだけは確かのようで。
「わかりました。
後三日」
「後三日で決着つけてみせるよ。
だから三日間は、氷雨もあの場所には近づかないこと。
後、エスカルカゴ周辺でも例の事件、起きたらしい。
氷見の方でも出来る限りは動くし、氷見だけじゃなく上にも議題としてあげる。
だけど末端は、末端じゃないとわからないだろ。
今一度、ナイトメアのことについて、紅蓮には伝達しておいてほしい」
「大丈夫っすよ。
紅蓮の奴らに、ナイトメアに堕ちるやつはいません。
けど、この街のガーディアンにはなれるように
精一杯、防衛線張っておきます」
「任せたよ」