水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
「この辺の族の頭。
この特攻服着てやってんだよ」
そう言って見せられたのは、
真っ白い特攻服。
裏面には、朱雀の迫力ある刺繍が描かれていて
チームの名前らしい、
紅蓮の文字が同じく刺繍で縫いとめられている。
朱雀模様の下には、何かの文章がやっぱり刺繍で縫いとめられていて
腕には、七代目総長の腕章。
氷雨の名前が、やっぱり刺繍で縫い付けられていた。
「黒田は、紅蓮の特攻隊長。
同じように、アイツの特攻服もその中にある。
お名前が知ってる、氷雨は
不良集団束ねてる、紅蓮って言う暴走族の七代目総長ってこと。
だからこの辺の奴らの情報は、蜘蛛の巣を張り巡らしたみたいに
配置されてるチームの奴らから、逐一知らせとして入る」
そう言ってる傍から、氷雨の携帯には着信が入り続ける。
その着信音を切って、携帯を開くと『有政。武村から連絡。エリアB』っと
私にとっての暗号を指示すると、黒田君はすぐに鍵を掴んで飛び出していく。
「氷雨?」
「大丈夫。
紅蓮は負け知らずだし、有政は強いよ。
ほらっ、こんな風に入って来るんだ」
そう言って見せてくれた携帯の一文。
*
氷雨さん、茶房前の繁華街で
影狼に相中の佐竹がやられました。
*
それだけの文章。
「オレが今、守ってる世界は
こんな世界なんだよ。
だから関わるな。忘れろ。
いいな。
家まで送ってやるよ。
オレももう帰るから」
そう言うと氷雨は、特攻服を片付けて誰かに連絡をすると、
ドアを閉めて鍵をすると、隠し場所らしいそこへ鍵を置くと
バイクに乗って私を同じように後部席に誘導する。
七代目総長。
その重さが、役割がそこに関わる人たちにとっての
どんな重さがあるかはわからなかったけど、
どんなに反抗していても、
氷雨は昔とずっと変わらない氷雨だと知った夜。
時雨や、小母さんたちに反対されていても、
氷雨には、氷雨が追い続ける夢を叶えて欲しいと思えた。