水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
13.開かれる世界 -妃彩-
ずっと閉じ込められていた
あの施設から連れ出してくれた、
氷雨君と、もう一人の魔法使いさん。
朝起きたら消えてしまう夢だったらって
怖かったのに……
目が覚めても、氷雨くんは消えなかった。
私が眠っていた場所は、
見慣れない部屋。
その部屋には、
今はあの魔法使いさんが居た。
「目が覚めた?
氷雨は今学校の時間だよ。
君に逢いたくて、学校の後は
慌てて帰ってくるだろうけどね」
そう言いながら、テーブルの書類を手にして、
私のベッドへと近づいてきた。
ベッドサイドには、使い慣れた車椅子。
その空間は私が過ごしやすいように、
いろいろと考慮してくれた空間みたいだった。
「ここは神前悧羅大学付属病院。
君が居た施設は、
今頃警察の取り調べが入っている頃だろうね」
サラリとそう言った、魔法使いさんの言葉に思わず体を委縮させる。
警察?
取り調べ?
だけどあの場所を見つけるまで、
私はいろんな場所を転々とするしかなくて、
氷雨くんと魔法使いさんに助け出して貰えたのは嬉しいけど
この先の未来を考えてたら負担で溜まらなくなる。
「えっと……」
名前を聞いた気がするけど思い出せなくて、
言葉を詰まらせる。
「私は氷川朔良。
氷雨は可愛い弟分だよ。
悪いようにしない。
安心して、過ごせる環境を提供するよ」
氷川さんは穏やかな口調で話しかけた後、
私の前に何枚かの書類を置いた。
「君はまだ未成年だ。
義務教育が終わって、何事もなければ
高校二年生になっているはずだ。
違うかい?」
確かに氷川さんの言う通り、
高校生になっていてもおかしくない年齢。
お父さんやお母さんが居てくれたら、
私は高校にも行ってたと思う。