水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
半ば、ドン引きの様子で
時雨や飛翔へと視線をうつす。
飛翔はかなり不機嫌になってるのが目に見えて感じられるし、
時雨は、世渡り上手の極意を発揮して
飛翔をフォローするように、女の子たちと会話を弾ませていた。
次第に二人の輪から離れていく私は、
そのまま駅前の商店街をプラプラと一人で歩く。
何処か喫茶店に出も入って、
連絡すればいいかな。
そんな風に思って、一人行動を始める。
初めての商店街。
順番に天然石の店や、洋服屋を覗きながら
二人を待てるお店を探す。
その時、目の前に見慣れた氷雨が入って来る。
氷雨は、車椅子の女の子と同じみたいで
車椅子の女の子を見て思い浮かんだのは、
夏休みに事故で出逢った、あの女の子。
ほんの少しの興味を抱えて、
氷雨と彼女の方へと足を向ける。
「氷雨」
声をかけると、
氷雨は女の子に優しい眼差しを見せながら
普通に切り返してくる。
「由貴……。
何、兄貴らも来てるの?」
何気なく戻された返事に、
脳内で今も女の子たちに囲まれてる二人を思い出しながら
心の中で、ご愁傷様と呟きつつ会話を続けた。
「クラスの子に誘われたからね。
ても今は、他校の女の子たちに囲まれてるよ。
私は暫く退散中。
氷雨……この子……」
「あぁ、そうだよ。
妃彩、コイツ……氷室由貴。
兄貴の親友兼、オレの幼馴染」
氷雨が、車椅子の女の子に
正式に私を自己紹介してくれる。
「一度、入院先の病院で私は知ってるんだけど
話すのは初めてだね。
氷雨の事は小さい頃から、今日に至るまで
何でも知ってるから、知りたいことがあったら
何時でも聞いてくるといいよ」
「って、由貴。何、吹き込んでだよ」
照れ隠しに声を荒げる氷雨が意外で、
車椅子の女の子も、クスクスと笑みをこぼす。
そんな彼女の笑いに引き寄せられるように
私も思わず笑ってしまう。
「ったく……勘弁してくれよ」
そう言いながら、
氷雨はお店のカウンターに何かを買いにいく。
暫くして、トレーに入れて持ってきたのは
紅茶とケーキセット。