水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
16.初めてのデート 後編 -妃彩-
初めてのデート。
私の隣には、
氷雨くんがずっといて守ってくれて……。
車椅子で過ごすようになってから、
諦めていたことを一緒にしてくれる。
ねぇ、神様。
隣に、氷雨くんが居てくれるだけで
どうして世界がこんなに
キラキラ輝いてるみたいに見えるの?
車椅子を押してくれる氷雨くんの顔は、
後ろを振り向かないと見えないんだけど、
それでも少しでも顔を見たくて鞄から取り出した、
鏡の中に氷雨くんの表情を映し出す。
今井さんが連れて行ってくれた映画館。
そこで私は、
氷雨君と二人きりになって映画館に向かった。
氷雨くんが見たかったのは、
宇宙人が出てくる怖そうなSF。
怖いのが苦手は私は断ることも出来ずに
固まっていると、
氷雨くんが私が見たいのをきいてくれた。
(あなたに恋して)
そう書かれているタイトルを指差すと、
溜息をつきながら、崩れる氷雨くん。
それでも彼はすぐに、そのチケットを購入してきて
シフターへの入り口を潜った。
シアターに通された私の場所は、
一番前の、端っこ。
通された場所は、
見やすい場所ではなかったけど
それでも私は幸せだった。
そんな今の状況に心から怒ってくれた
氷雨くんの優しさも暖かかった。
映画が始まっても、
隣に居る氷雨くんが気になって、
本編に集中できない。