水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


恋愛ものにありがちな
官能的シーンが映るたびに
隣に居る氷雨くんを
チラチラ見つめながら意識してしまう。


そんな私に気が付きながら、
知らんぷりをしてくれてる氷雨くん。


そして途中で居眠りしちゃった氷雨くん。



映画を楽しむよりも、
気がついたら氷雨くんの久しぶりに見た寝顔に
もっとドキドキしてた。



二時間の上映時間なんてあっと言うまで、
映画館を出た私は、氷雨くんが案内してくれるままに
いろんなところをほ回った。


私の洋服を探したり、
氷雨くんが大好きな洋服屋さんに入ったり。


知らなかった氷雨くんを少しずつ、
知っていけるのが嬉しかった。


ショッビングセンターから商店街へ。



車椅子の私に向けられる視線は、
様々だけど……それでも、
氷雨くんが隣に居てくれるから、
凄く凄く力強かった。


アイスを半分子して食べたり、
クレープやケーキを食べたり。


一緒の時間を楽しむ私の隣、
氷雨くんも笑い返してくれた。


夕方に近づいてきて、
もうお別れなのかなって悲しくなってた私に、
氷雨くんは「花火に行くか?」って言ってくれた。



花火。


両親がなくなってから、
一度も行ったことがない。



小さい時から大好きだった。


頷くと、再び氷雨くんは車椅子を押しながら
私をその場所へと連れて行ってくれた。




その途中、大きなラブが私を見て
尻尾を振りながら近づいてくる。



その子を思わず、
ギュッと抱きしめた。



「介助犬に興味はおありですか?
 
 介助犬は、無償で貸与されています。

 気になることがあれば、
 どうぞ訪ねて来てくださいね。

 この子はまだ見習い期間中の介助犬候補の
 水晶(みずあき)号です。

 順調にいけば、来年には
 介助犬としてデビューする予定なんですよ」



水晶と紹介された子をギュっと抱きしめたまま
話しを聞く私。
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