水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
何時かは……私も、
考えないといけないのかな?
今は今井さんが私のお世話をしてくれる。
でも足が動かないからって、
私、全部そのせいにして全てを諦めてた。
足が動かなくても、車椅子でも
多分……出来ることは沢山あるんだと思う。
だって、今日……私が諦めてたことを、
氷雨くんが一緒にしてくれたから。
だから……もしかしたら、
この子たちが力を貸してくれたら、
もっと私、いろんなことが出来るのかもしれない。
私の心に、
ちょっとした光が差し込んできた。
介助犬かぁ。
そう思ってる私の隣、
氷雨くんも何か真剣に
考えているみたいだった。
同じこと考えてたら
嬉しいなーなんて思いながら
そんな氷雨くんの横顔を見つめてた。
そのまま私たちは、介助犬コーナーのすぐ傍の
カフェへと入って、テーブルに座る。
車椅子の私も、そのままテーブルにつけるようにと
先にお茶をしてた人にお店の人が声をかけて
移動して貰ったテーブル。
確かに入りやすいけど、
その場所は、
外からも気付かれやすいわけで……。
「氷雨」
そう思ってるとすぐに、
氷雨くんの名を呼ぶ声が聞こえた。
視線を向けると、そこには氷雨と同い年くらいの
色白い男の子が姿を見せる。
「由貴……。
何、兄貴らも来てるの?」
氷雨くんも良く知ってる人なのか、
その人に優しく声をかける。
「クラスの子に誘われたからね。
ても今は、他校の女の子たちに囲まれてるよ。
私は暫く退散中。
氷雨……この子……」
「あぁ、そうだよ。
妃彩、コイツ……氷室由貴。
兄貴の親友兼、オレの幼馴染」
そう言いながら、突然私の紹介を始める氷雨。
でも、この氷室さんって人の口ぶりだと、
私のことを知ってそうな気がするのに、
私には心当たりが浮かばなかった。
「一度、入院先の病院で私は知ってるんだけど
話すのは初めてだね。
氷雨の事は小さい頃から、今日に至るまで
何でも知ってるから、知りたいことがあったら
何時でも聞いてくるといいよ」
「って、由貴。何、吹き込んでだよ」
あの人が居ると、
氷雨くんの表情が私が知らない貌にコロコロと変わっていく。
そんないろんな貌を見せてくれる、
氷雨くんが楽しくて、クスクスと零れる笑い。
そんな私の笑い声に重なるように、
由貴さんも笑ってる。
「ったく……勘弁してくれよ」
そう言いながら、
氷雨くんは、テーブルをはなれて、
お店のカウンターに何かを買いにいく。