水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
その言葉に、
変な緊張感が解放されていく。
「氷雨が帰ってきたら、すぐに行くんで
あと少し、私は彼女の傍に居ます」
由貴さんがそう言うと、すぐに二人は移動していく。
「氷雨が、貴女と出逢って
凄く楽しそうだね。
あんなに楽しそうな氷雨、
久しぶりに見たよ。
私は、氷雨と妃彩さんの味方だよ。
氷雨の不安事とかがあったら、
何時でも連絡しておいで」
由貴さんはそう言うと、鞄から手帳のメモページを破って
その中に連絡先をサラサラと書き込んで、私に手渡す。
「氷雨には内緒。
でもこれは氷雨の親友としてだから。
氷雨の事で気にかかることとか、
心配なことがあったら、
いつでも連絡しておいでよ。
妃彩さんの知らない氷雨の時間。
一人くらい、密告できる存在がいると
安心できるでしょ」
氷雨くんに内緒と言われた言葉に、
慌てて鞄に、由貴さんの連絡先を片付けると
向こう側から、氷雨くんが走ってくるのを確認する。
氷雨が私たちテーブルに走ってきて、開いている席に座ると
由貴さんがすぐに立ち上がった。
「氷雨、飲み物買って来る。
喉乾いてるでしょ」
「アイスブラック頼む」
アイスブラックを購入して、
テーブルに運んだあと、
由貴さんは私たちの前から移動した。
由貴さんに遊ばれてる、氷雨くん。
凄く新鮮だった。
だけど私には、そうやって怒ってる姿も
宝物なんだよ。
どれも私の知らない氷雨くんだから。
ブラックを飲み終えた後、
氷雨くんは、ゆっくりと立ち上がった。
「さて、妃彩オレらも行くか」
そう言って、
氷雨くんは私の車椅子をゆっくり押してくれる。
車線が封鎖された歩行者天国になってる道路。
そこをゆっくりと進んでく車椅子。
椅子に座ったままの私の目線は、
人だらけで、圧迫感が強い。
車椅子だからと、
うざそうに睨んでいく人も居る。
逃げ出したくなりそうな心を
氷雨くんが、
守るように寄り添ってくれた。
「氷雨」
「氷雨さん」
「氷雨さん」
そんな声が聞こえていつの間にか、
氷雨くんの周囲には男の人たちが集まってくる。