水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
18.一本の電話 再会の少女 -由貴-
11月の上旬に文化祭が無事に終わり、
生徒会の役職から解放された私たちは、
受験モードも本番になってきた。
推薦入学の人たちは、
少しずつ小論文や試験が始まっている。
私も医大入学の進路を変更することもなく、
流されるように、
時雨や飛翔たちと受験勉強の日々を過ごしていた。
氷雨はと言えば、少しずつ変化が感じ取られた。
朝から体力作りの為か、ランニングを始める。
学校の授業もさぼりがちだったのに、
定期的に学校で行われる実力テストでは、
成績が中ほどから一気に上位10本の指へと変わって行った。
それでも自宅に居る時は氷雨と、小母さん・時雨との衝突は変わることなくて、
氷雨自身の将来絵図を、反対されていることでかなりモチベーションが
低くなってるのが感じて取れた。
その朝も氷雨にとっての面白くない時間は始まった。
「おはよう」
まだ眠そうな顔で、寝起きの声のままダイニングに姿を見せる氷雨は
所定の位置に座ってTVのリモコンをつけた。
朝のワイドショーなどが始まる中、
テーブルにセットされた、朝食を氷雨は食べ始める。
時雨は、食事をしながら単語帳らしきものを
順番にめくりながら続けていた勉強の手を止めた。
「氷雨、アナタ進路は決めたの?
まだ警察になりたいなんて思ってるんじゃないでしょうね。
ランニング始めたみたいだけど、
警察学校に行くための体力作りならお母さんは反対よ」
そう言いながら、会話を切りだした小母さんは
そのまま氷雨の正面の椅子に座る。
「氷雨、昨日も帰ってきたの遅かっただろ。
学生のバイトは22時まで。
お前、1時頃まで何やってんだよ。
今がどういう時期か、ちゃんとわかってんのか?
この間の実力テスト、成績も上昇してたし
やる気にはなってんだと思うけど、遅すぎだろ。
受験はそんなに甘くないぞ」
っと追い打ちをかけるように、
時雨まで会話を続けた。
チラリと見つめる氷雨の表情は、
あっと言う間に不機嫌そうになりながらも、
氷雨は一言も発することなく、朝食を食べ続けた。