水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「一度、私がお会いしたことがあるから、
 訪ねて行っても不審はないわよね」



そう言って、悪戯笑みを浮かべた和花ちゃんは
鞄の中からメイクポーチを取り出して
化粧直しを始めた。




お化粧かぁー。




私なんてまだ洗顔フォームを使って
顔を洗うくらいしかしてない。

後は、日焼け止めのクリーム。



私もメイクをしたら、
もっと可愛く馴れるのかな?



そしたら、氷雨君……
もっと喜んでくれるのかな?




今までの私なら、
考えることもなかったメイク。



でも今は、
ファッションもメイクも
沢山のモノに興味がわいてる。




それも……氷雨君が
私の隣に居てくれるから。





女の子は大好きな人に出逢えると、
綺麗になれるんだよって、
昔から大好きな本に書かれてた言葉。




私も……今、
そうなっていけるのかな?






車窓は知らない景色を映し出して、
聖フローシアとも、
桜ノ宮とも違う門の前でゆっくりと止まった。





パワーウィンドウをゆっくりと下げて、
門の中の様子を見つめる。





学校から出てくる男の子たちは、
時折、チラチラと中を覗きながら
通り過ぎていく。





「妃彩ちゃん、
 氷雨君の姿はあって?」





和花ちゃんの声をききながら、
私の鼓動はすでに高鳴ってる。



この場所に
毎日、氷雨君が通ってる。

もしかしたら、
今日も居るかも知れない。

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