水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
通り過ぎていく
男子生徒たちを見送りながら、
ただ一人、
氷雨君の姿を探そうと必死に目を凝らす。
すると校舎の向こうから、
私に気が付いて誰かが手を振ってるみたいだった。
氷雨君かなーっとジーっと見つめてみるものの、
そうじゃないみたいで。
誰かわからずに、その方向を見つめていると
隣に居た、和花ちゃんが私の服をつまんだ。
「彼らよ。
あの手を振ってるのが、
氷室さんでしょ」
そう言って告げられた視線の先には、
あの花火大会の日に出逢った、氷室さんたちの姿。
「それで、右隣にいるのが金城さん。
その後ろにいるのが、早城さん。
ねぇ、氷室さんが手を振ってるのって、
こっちじゃない?
妃彩ちゃん、貴女にではなくて?」
小声で情報を教えてくれる和花ちゃん。
その間に氷室さんたちが車の傍へと近づいてくる。
「こんにちは。
誰か待ってるの?
確か君は生徒会主催のお茶会に
来てた、氷川さんだね」
穏やかな口調で、
そうやって告げる氷室さん。
そう言う氷室さんだけど、
隣に私がいる時点で、
氷雨に逢いに来たのは知ってると思う。
「あっ、……あの……。
氷室さん、今日は氷雨は?」
思い切って訪ねた私に氷室さんは、
『氷雨は今日は学校休んだんだよ』っと切り返した。
お兄さんの時雨さんは、
途端に不機嫌そうな顔を見せる。
学校休んだ?
メールをくれないのは
体調を崩してるから?
途端に不安になる。
「心配しなくても大丈夫だよ」
不安になった私を気遣うように
氷室さんが切り返してくれた。
「時雨、何か言ったら?
春宮さんが不安になると思うんだけど」
「なんか氷雨が迷惑かけてるみたいで。
アイツ、今は家にも帰ってなくて」
えっ?
家にも帰ってない?
途端に氷室さんは
時雨さんを物凄い勢いで睨み付ける。
「氷雨には伝えておきます。
春宮さんが学校に訪ねて来てたって。
こまめに連絡いれるように言っておくよ」
半ば強引に、氷室さんによってまとめられて
彼らは駅の方へと歩いていく。
別れた私たちを乗せた車は、
再び桜ノ宮サナトリウムへと戻った。