ファーレス騎士団のゆるい日々
気づいてないのは一人だけ
ファーレス騎士団には、ひときわ目を惹く騎士が所属している。夜の闇のような、とたとえられる黒い髪。星を浮かべたように煌めく黒い瞳。冷たいほどに整った美貌とは裏腹に物腰は柔らかだ――仲間の騎士たち以外には。
周囲の騎士たちより頭半分背が高く、騎士団内で一、二を争う剣の腕の持ち主であり、仲間にはむしろぶっきらぼうに接することが多い。ファーレス騎士団、副団長エドワード・ウィルクス。通称エディである。
「エディ様! この間のケーキ、どうでした?」
癖のない黒髪を無造作に首の後ろで束ね、勢いよく歩くエディを呼び止めたのは、近所のケーキ屋の娘だった。将来は家業を継いでケーキ屋をやりたいと、毎日修行に勤しんでいる。
「おいしくいただいたよ、マーガレット。ウィルにも分けてやったら、おいしいと誉めていた」
「まあっ!」
マーガレットと呼ばれた少女は、頬を紅潮させて友人たちと視線をかわす。
「ウィルはなんて言ってた?」
「なぁんにも。感想聞かせてくれたら、エディ様におたずねしたりしません」
彼女の肩をぽんと叩いて、エディはきょろきょろと視線を巡らせた。エディを見つめている少女達の向こう側に探し人を見つけて、呼びかける。
周囲の騎士たちより頭半分背が高く、騎士団内で一、二を争う剣の腕の持ち主であり、仲間にはむしろぶっきらぼうに接することが多い。ファーレス騎士団、副団長エドワード・ウィルクス。通称エディである。
「エディ様! この間のケーキ、どうでした?」
癖のない黒髪を無造作に首の後ろで束ね、勢いよく歩くエディを呼び止めたのは、近所のケーキ屋の娘だった。将来は家業を継いでケーキ屋をやりたいと、毎日修行に勤しんでいる。
「おいしくいただいたよ、マーガレット。ウィルにも分けてやったら、おいしいと誉めていた」
「まあっ!」
マーガレットと呼ばれた少女は、頬を紅潮させて友人たちと視線をかわす。
「ウィルはなんて言ってた?」
「なぁんにも。感想聞かせてくれたら、エディ様におたずねしたりしません」
彼女の肩をぽんと叩いて、エディはきょろきょろと視線を巡らせた。エディを見つめている少女達の向こう側に探し人を見つけて、呼びかける。