ファーレス騎士団のゆるい日々
 西瓜が二つ、とオーウェンは実に生々しい感想を抱いたのであるが、詰め物ではなく自前らしいということは騎士団員全員の暗黙の了解である。

 会場内には、使用人に扮した騎士団員たちも紛れ込んでいて、エディと並んでいるオーウェンに時々恨めしげな視線を送っている。余談ながら、オーウェンの方が頭の位置が低い。

「エディ。ちょっと顔貸せ」
「どうした」

 扇の陰に顔を隠し、エディはオーウェンに顔を寄せる。

「向こうの花瓶のところに立っている男、ジャイド子爵と何やらひそひそやってた――俺は後をつけてみる。お前はここにいてくれ」
「わかった。わたしはここに残って警戒を続ける。誰か連れて行かなくて平気か?」
「一人で大丈夫だ」
 
 オーウェンがジャイド子爵とひそひそ話をしていた男――オーウェンの見立て通り密偵だった――を捕まえて縛り上げ、部下に引き渡してから戻ってくると、会場からエディの姿は消え失せていた。

「エディがいない、お前見なかったか?」
「さっきテラスの方に行くのを見た」
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