ファーレス騎士団のゆるい日々
「お前に回すくらいなら、もっと誠実な男を見つけてやる」
「ひでぇ。それより、飲みに行こうぜ?」
「お前の奢りならな」
やれやれ。じゃれ合いながら奥に入っていく二人を見て、騎士団員たちは顔を見合わせる。
だませていると思っているのは、「エディ」だけだ。少々身長が高すぎるが、整った美貌、柔らかな微笑み。上から布をどれだけ巻いて押さえつけても、「厚い胸板」と言い張るには少々大きすぎる胸囲。
ファーレス騎士団、副団長エドワード・ウィルクス。本名、エドナ・ウィルクス――伯爵家令嬢だ。病弱な兄のかわりにやってきた彼女は、最初から男性で通すつもりだったらしいけれど。
「あれでだませているつもりなのかねぇ」
「本人がそう思っているのなら、そっとしておいてやろうぜ」
みんな知っている。「彼」が「彼女」であることを。
仲間として認めているから、失いたくないから、だから皆気づいていないふりをする。
少女たちも「彼」が「彼女」であることを知っている。だから女同士の愚痴をこぼすのだ――エディだけには。
「ひでぇ。それより、飲みに行こうぜ?」
「お前の奢りならな」
やれやれ。じゃれ合いながら奥に入っていく二人を見て、騎士団員たちは顔を見合わせる。
だませていると思っているのは、「エディ」だけだ。少々身長が高すぎるが、整った美貌、柔らかな微笑み。上から布をどれだけ巻いて押さえつけても、「厚い胸板」と言い張るには少々大きすぎる胸囲。
ファーレス騎士団、副団長エドワード・ウィルクス。本名、エドナ・ウィルクス――伯爵家令嬢だ。病弱な兄のかわりにやってきた彼女は、最初から男性で通すつもりだったらしいけれど。
「あれでだませているつもりなのかねぇ」
「本人がそう思っているのなら、そっとしておいてやろうぜ」
みんな知っている。「彼」が「彼女」であることを。
仲間として認めているから、失いたくないから、だから皆気づいていないふりをする。
少女たちも「彼」が「彼女」であることを知っている。だから女同士の愚痴をこぼすのだ――エディだけには。