ビターレプリカ【短編】
「未────」
「あ!風見(かざみ)くん!」
そう大きな声で風見の名前を呼ぶと、俺との会話を中断して走って行った。
そして……
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに俺よりもきっと丁寧に、綺麗に、豪華に包んである……
“チョコ”を渡しているのが見えた。
ああ、そういうこと。
何だ、そういうことか──……
「っ──!」
気付くと俺は鞄を持って教室を飛び出していた。
何だよこれ、俺らしくない。
……俺らしい?
俺らしいってなんだよ!俺って、俺って……
「何なんだよ……」
校舎の裏で、壁にもたれかかってずるずると腰を下ろした。