ビターレプリカ【短編】
俺は、未桜が好きだった。
そして、未桜も俺と同じ気持ちだと……
ずっとずっと、思っていた。
勘違いしていた。
まだ、はっきり未桜に気持ちを伝えなくても大丈夫だ。
いつかきっと、そういう日が来るから、まだ大丈夫。
そうやって、どこかで何故か安心している自分が居た。
でも、そう思っていた時から未桜の目には俺は映っていなかった。
多分、俺に“クッキー”を渡したのも、友達だからという事なのだろう。
馬鹿なのは俺だったんだ。
「はは、あほくさ……」
未桜に貰った袋を開けて、クッキーをかじった。
「にが……」
甘いはずのクッキーが、酷く苦いと感じた。
頬にゆっくりと涙が伝って行くのが分かった。