ビターレプリカ【短編】
「え?」
「チョコが無理だって思い込んでるから食べられないのかもね?」
「は?何言ってんの。俺はただアレル───」
「最初から!……最初から、駄目だって諦めてたら勿体無いじゃん?」
そう言うと、俺の方を見てふわっと笑った。
「やってみなきゃ分からない事もあるんだよ、きっと。駄目だったら駄目だったで、それで良いじゃない。何もしないよりは全然良いよ」
「……切野……」
「素直に、自分と向き合えたら良いね」
そして、
「頑張って」
と小さくガッツポーズをした。
俺は、立ち上がって未桜に貰ったクッキ―と、切野のチュッパチャップスをしっかり握りしめた。
「もし、そのクッキーに飽きたら……飴、食べてね?」
少しだけ、悲しそうな顔をして。
でも。それでも、最後まで笑顔で居て俺の背中を押してくれた切野に、
「……おう。ありがと」
そして俺は、後悔をしないように走り出した。
【END】