初恋~番外編~
店を出ると、西野が深々と頭を下げて言った。
「ごちそうさまでした」
「さっきも聞いた」
「でも、ちゃんと言ってなかったから」
「いいよ、あれくらい」
珍しいと思った。
喫茶店くらいでこうもちゃんとお礼を言うやつはそういない。
少なくとも俺の知ってる限りでは、男の俺が、しかも医者をやってる俺なら払って当然、と思ってる奴も少なくない。
そんな中、ちゃんと常識をわきまえ、肩書きなど無視して対応してくれた事を嬉しく思った。
駅までの道を並んで歩いていて、ふと気付いた。
明らかに店にいた時と西野の様子が違う。
さっきから何も言わず、下を向いて歩いていた。
「どうかした?気分、悪いのか?」
「えっ?ああ、違うの!」
弾かれた様に俺に視線を向けた西野は、また俯いてしまった。
そして躊躇いがちに口を開いた。
「さっきのあれ」
「あれ?」
西野が何を指してるのか分からなかった。
首を傾げると、なお言いづらそうにした。
「お店で私の頭、ぽんぽんってしたでしょ?」
「あぁ、あれか」
「うん。あれ、景一くんよく沙羅にしてたから・・・」
「あぁ・・・・」
そういえば、沙羅以外の女性にした事はなかった。
一種の癖みたいなものだと思っていたが。
「悪い。つい癖で。嫌だったか?」
「ううん!違うの。ちょっと照れただけ」
やっと視線を上げて俺を見た西野が笑った。
「私ね、中学のとき、ふたりに憧れてたの。だからその時の仕草を私にもしてもらえてちょっと嬉しかった」
この時、なぜ西野といて居心地がいいと感じたのか分かった。
西野は感情がストレートだからだ。
それも相手に押し付けるものではなく、自分の心を開いて見せてくれる。
だからこちらも構える事無く自然でいられる。
自分の周りにはいないタイプだと思った。
「ごちそうさまでした」
「さっきも聞いた」
「でも、ちゃんと言ってなかったから」
「いいよ、あれくらい」
珍しいと思った。
喫茶店くらいでこうもちゃんとお礼を言うやつはそういない。
少なくとも俺の知ってる限りでは、男の俺が、しかも医者をやってる俺なら払って当然、と思ってる奴も少なくない。
そんな中、ちゃんと常識をわきまえ、肩書きなど無視して対応してくれた事を嬉しく思った。
駅までの道を並んで歩いていて、ふと気付いた。
明らかに店にいた時と西野の様子が違う。
さっきから何も言わず、下を向いて歩いていた。
「どうかした?気分、悪いのか?」
「えっ?ああ、違うの!」
弾かれた様に俺に視線を向けた西野は、また俯いてしまった。
そして躊躇いがちに口を開いた。
「さっきのあれ」
「あれ?」
西野が何を指してるのか分からなかった。
首を傾げると、なお言いづらそうにした。
「お店で私の頭、ぽんぽんってしたでしょ?」
「あぁ、あれか」
「うん。あれ、景一くんよく沙羅にしてたから・・・」
「あぁ・・・・」
そういえば、沙羅以外の女性にした事はなかった。
一種の癖みたいなものだと思っていたが。
「悪い。つい癖で。嫌だったか?」
「ううん!違うの。ちょっと照れただけ」
やっと視線を上げて俺を見た西野が笑った。
「私ね、中学のとき、ふたりに憧れてたの。だからその時の仕草を私にもしてもらえてちょっと嬉しかった」
この時、なぜ西野といて居心地がいいと感じたのか分かった。
西野は感情がストレートだからだ。
それも相手に押し付けるものではなく、自分の心を開いて見せてくれる。
だからこちらも構える事無く自然でいられる。
自分の周りにはいないタイプだと思った。