初恋~番外編~
だけど、さすがに2週間も経てば期待は諦めへと変わっていた。

(景一くん、忙しいもんなぁ。それに周りが景一くんを放っておかないだろうし・・・私に連絡する必要性がないもんね)

景一くんの周りには、綺麗な女の人が集まってくる。
そんな事は百も承知。
クラスメイトのひとりだった私に、わざわざ連絡なんて・・・・するはずない。

そんな事を考えて、ベットでごろごろとくつろいでいる時だった。

不意に携帯が着信を知らせた。
びっくりして確認をすると、そこには知らない番号。

もしかして・・・?

一瞬で私の鼓動が跳ね上がった。
わたわたと携帯を開き、夢中で通話ボタンを押した。

「ハ・・・ハイ!」
『藤堂だけど・・・ごめん、今忙しかった?』
「ううん!大丈夫ですっ!」

信じられない!
受話器から景一くんの声が聞こえてくる。

もしかして、って思ったけど、まさか本当に景一くんだと思わなかった。
緊張のあまり声がうわずってしまう。

『仕事中?』
「ううん!もう家にいてます!」
『なら、なんで敬語なの?』

私の答えに景一くんが笑いながら言った。
正座して電話している自分に気付き、私も自分のあまりの慌てぶりに笑ってしまった。

「本当だね。なんか緊張しちゃって」

あははっと笑った私の耳に小さな景一くんの声が届いた。

『実は俺も緊張してる』
「えっ?」
『初めて電話したから』
「景一くんでも緊張したりするの?!」

意外な言葉に驚いて声を上げた。
受話器からため息まじりの景一くんの声がした。

『この前も思ったけど、西野って俺を人間だと思ってないだろ』
「いや~・・・そんな事はないんだけど・・・」

また余計な事を言ってしまった・・・。
思った事をよく考えずについ口に出してしまう。
私の悪い癖だ。

ごめんなさい、そう言いかけるより先に景一くんが言った。

『今から会えないか?』
「え?今から?」

時刻は夜9時過ぎ。
私はすでにパジャマモード。
とてもじゃないけど、今すぐ出れる状況じゃない。

だけど

初めて景一くんが誘ってくれたんだから。
これを断れば、次なんて無いかもしれない。

『やっぱり無理だよな』
「行きます!出ます!どこに行けばいい?」

諦めた口調の景一くんの言葉に重ねるように叫んでいた。
聞けば景一くんはうちの近くの駅にいた。
私は駅近くにある公園で景一くんに待っててくれるように頼んだ。

駅前には座って待てる場所がないから。
仕事終わりの景一くんなら、きっと疲れてるだろうから。
公園のベンチで待っててくれる様に言って電話を切った。


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