初恋~番外編~
そう言って景一くんも微笑み返してくれた。
ほわんって心があったかくなるのを感じた。

すると、笑みを消した景一くんが真剣な表情で私を見た。

「西野。これから先、俺のそばにいてくれないか?」
「えっ?」

景一くんの言っている意味が理解出来なかった。
あまりに唐突で。
困惑して言葉が出ない私に、景一くんは先を続けた。

「この2週間、ずっと西野の事が頭から離れなかった。クラスメイトの意外な一面に面食らっただけだろうと、初めはそう思っていた。だけど、一日の中で何度も思うんだ、『西野ならこうするだろう』『西野ならこう言うだろう』って。俺の日常の中にすっかり西野が入り込んできてた。沙羅じゃなくて西野が」

「わたし・・が?」

「あぁ。俺には西野が必要なんだ。だからそばに居て欲しい」

「なんだか・・・それって・・・」

また涙がぽろぽろ溢れてきた。
なんて言っていいか分からない。
言葉に詰まって、景一君を見つめるしか出来ない私に景一くんは照れた様に笑って言った。

「西野が好きなんだ」

その瞬間、ぽろぽろだった涙が滝の様に溢れ出した。

「わたっ・・・うぇ・・・わたし・・・」

何かを話そうとするけど、やっぱり言葉にならず号泣する私に、景一くんは今度は胸を貸してくれた。
頭を引き寄せ、ふんわりと髪を撫でてくれた。
でも、そんな事されたら余計に泣いてしまう。
だけど、私の気持ちはちゃんと伝えなきゃ。

きっと涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げて景一くんを見た。

「わたっ・・しもっ!私も・・けいいち・・くんが好きなの!中学・・の時から、ずっとっ!!」
「西野・・・・」

泣きじゃくりながらの私の告白に、景一くんは照れた様に困った様に優しく微笑んで私の頬を両手で包んだ。

「子供みたいだな」
「ごめ・・んね。すごい・・顔になって・・るよね?」

ぐずぐず鼻を啜って涙でぐちゃぐちゃの顔なんて見られたくないけど、景一くんが私の頬を柔らかく拘束するから俯く事も出来ない。
恥ずかしいけど、景一くんを見つめるしかなかった。

景一くんは親指で頬の涙を拭って、ゆっくり目を閉じた。

つられる様にして目を閉じた私の唇に、柔らかな暖かな感触が伝わった。

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