初恋~番外編~
「景、今日は来てくれてありがとう」


披露宴を終えたロビーで、出席者の見送りをしていた沙羅が俺に近づきそう声をかけた。

「幼馴染の結婚式だからな。なんとしてでも出るさ」

今まで見てきた中で、間違いなく一番綺麗になった沙羅がはにかむように笑った。

「ほんと、景には感謝してる。言葉では言い表せないくらい・・・」

そこで声を詰まらせた沙羅の目に涙が浮かんでいた。
俺は綺麗に結い上げられた髪に気を遣いながら頭を撫でた。

「もう充分伝わってる。沙羅、幸せになれよ」

俺の言葉に沙羅は言葉もなくただ頷いた。





沙羅の笑顔を見て、心からほっとする自分がいた。

田宮を失って、ただ惰性のように時間を過ごしていた沙羅を見ていたから。
どうにかしてやりたくても俺ではどうする事も出来ず、ただそばにいてやる事しか出来なかった。

だから沙羅が心からの笑顔を見せている今、これで良かったのだと思える。


その反面、俺の心の奥に燻るのは喪失感とやるせなさ。

何年もの月日を共にしながら、焦がれるほどの想いを抱きながらも、沙羅の心を捉えることは出来なかった。
俺ではさせることの出来なかった表情を、田宮がそばにいるだけで沙羅は笑う。

自分のふがいなさに嫌気がさす。
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