初恋~番外編~
沙羅の親友の西野なら、俺と沙羅、そして田宮とあった色々な事を全て知っている。
もちろん俺の気持ちも。


西野はそわそわと落ち着き無く、その表情は『聞いてはいけない事を聞いてしまった』と自分を責めている様子がありありと出ていた。
それを見ていると、自然と笑みが零れてきた。

「西野って考えてることが透けて見えるな」
「えっ?!うそ!!」

なぜか頭をばっと押えた西野が驚いた様に俺を見た。
どうやら自分の頭の上に考えたことが出てきてるとでも思ったらしい。
その反応に俺は思わず噴出した。

「ははっ!西野、透けて見える訳ないから」
「そうなんだけど、景一くんなら見えちゃうのかもって思って」
「俺ならって・・・」

少し頬を膨らませ、すねた様に俺を見る西野にまた笑みが漏れる。

人と話をしてこんなに笑ったのはいつぶりだろう。
それに昔からの知り合いとはいえ、そんなに親しかった訳でもないのに。

俺は西野との会話を楽しんでいた。
最初は無理矢理連れてこられたはずなのに、今は居心地の良ささえ感じる。


こんな風に思わせる西野に俺は興味を持った。

「そういえば、西野もこの後仕事だと言ってたよな?なにやってるんだ?」

笑いを収めた俺が尋ねると、西野も機嫌を直して答えた。

「あ、看護師してるの。今日の夜勤、どうしても断りきれなくて」
「へぇ、西野が看護師ね」
「あ~、今『こいつで大丈夫なのか?』とか思ったでしょ?」
「いや、西野ならいい看護師だと思うよ」

正直な感想だった。
西野の持つ雰囲気は人を和ませる。
病気で落ち込んだ人も、西野なら嫌味なく励ませるだろう。
そう思った。

しかし西野は俺の答えが意外だったのか、一瞬きょとんとしてから照れたように「ありがとう」と微笑んだ。


その笑顔は、ふんわりと華が咲くような笑みだった。

不覚にも、俺はその笑顔に見惚れてしまった。

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