初恋~番外編~
そんな俺の視線の先で、西野が時計を確認して慌てた様に言った。

「ごめんね、景一くん。結構ひきとめちゃったけど、時間大丈夫?」
「あぁ・・・そろそろ行かないとな」

俺も時間を確認して結構な時間が過ぎていた事を知った。

ぱたぱたと身支度をした西野が伝票に手を伸ばした。
俺がそれより先に伝票を取ると、西野がしっかと俺の手をとった。

「だめだよ、景一くん。ここは私が払うから」
「いいよ」
「だめ!だって私が無理矢理連れてきたんだから」

意外と頑固だなと思った。
宥めるように、俺の手を掴んでる西野の手をぽんぽんと叩いた。

「こういう場合、普通男が払うもんだろ?」
「でも・・・」

まだ躊躇う西野を、今度は頭をぽんぽんと叩いた。

「いいんだよ。俺も楽しかったから」

そう告げてレジへと向かった。
後ろで小さく西野が「ごちそうさまです」と呟いたのを聞いた。


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