彼女志願!2nd
「萌」
穂積さんの声に顔を上げると、彼は苦笑しながら私の頬に指先を乗せる。
「萌はずっと翡翠社一本で書いていましたけど、気にしなくていいんですよ。あなたはこれが仕事なんですから」
「仕事……」
「そう、仕事。いくつ掛け持ちをしても、それぞれの仕事をきちんとやっていただければそれで結構です」
穂積さんの言葉がじわっと胸に広がる。
そうか……。
義理がどうのとかより、まず仕事として、その仕事で成果を上げることが何よりも大事なんだよね。
「ありがとうございます、穂積さん。私頑張ってみます!」
「はい」
穂積さんは眼鏡の奥の瞳を細め、それから私の膝の上の手をぎゅっと握りしめた。