彼女志願!2nd
彼は持っていた紙の束やPCをテーブルの上に置き、確かめるように私を見つめる。
「お茶もお出ししなかったようですね。申し訳ありません」
「い、いえ、いえ、その……」
確かにいつもなら、アルバイトの女の子がお茶を出したり、もしくはすぐそばのカフェからおやつやコーヒーを買って持ってきてくれたりするんだけど、今日はまぁ、とにかく忙しいらしく、誰も売れない作家の私に構ってくれないというかなんというか――
あ……「売れない」は余計だったかも。
まぁ、とにかく忙しいことは間違いない。
「すぐに買ってきますから。お待ちください」
「そんなお構いなく!」
と、椅子から立ち上がって彼を止めようとしたのだけれど、穂積さんはすぐに打ち合わせ室を出て行ってしまった。
「いいのに、そんなに気を遣わなくても……」
思わず本音が漏れる。
穂積さん……会社にいると、100パーセント担当編集の顔してる。
こういうとき、素の穂積さんを見せてはくれない。
だから時々、錯覚しそうになるんだ。
私と穂積さん、つきあってるんだよね、夢じゃないよね?って……。