氷の姫とヒマワリの王子様
ガタンッ
しん、と静まり返った教室に
大きな物音が響いた。
もちろん生徒達の意識は自然とそこに向くわけで、物音の主は一気に注目の的となった。
「どうしたー?神山」
心配したのか、担任の先生が呼びかけてくる。
「いえ、何も…」
「そうか、ならいいが。
ちゃんと話聞いとけよー」
「はい。すみませんでした」
…ったく、どうして私がこんな目に。
そうよ、紺野優がいけないのよ。
急に触れたりなんかするから…
ちらり、と横目で彼を見ると
彼もこちらを向いていてバッチリ目が合ってしまった。
「………クスッ」
「ーなっ⁈」
こ、こいつ今笑いやがった‼
あんたのせいであたしが恥じかく羽目に
なったというのに‼
こうなったら絶対に紺野なんか見ないんだから!
コツン。
「?」
何か軽い衝撃がきたと思ったら右手の横にきれいに折り畳まれた紙がひとつ。
…なんだろ。
とりあえず、ソレを開いてみると
<コッチむいて?>
なっ‼
ばっと勢いよく右となりを見ると可笑しそうにクスクス笑う紺野の姿があった。
「〜っ!
すみません、具合が悪いので保健室いってきますっ!」
荒々しく立ち上がるとそのまま早足に教室をでる。
普段の私からは想像もできないようなことをしているのは明らかだけど、今はそれどころじゃなくて焦っていた。
顔が火照っているのがわかる。
胸の鼓動がいつもより早いのがわかる。
まるで本当に病気になってしまったのではないかというほど胸がくるしい。
この感情の名前を私はまだ知らない。