大嫌い。でも…ほんとは好き。(旧題:ラブ・ストリーミング) 番外編
 長い時間をかけてチョコレートを溶かして、ブラックコーヒー大好きな課長の為に、試行錯誤してビターを効かした。

 だけど、ほんのり甘くしたかったのは……私の気持ちがそこにあるのを知って欲しくて。

 こんな憎たらしい上司だけど……それでも、本当は誰より私を見守っていてくれているの、知っている。

 ただ、素直になってしまったら、とことん抱きすくめられてしまいそうで、彼に嵌ってしまいそうなのが怖かった。

「そんなに俺が好きか?」

 不意打ちで腕を掴まれて、私の全神経が持って行かれる。
 急に優しい瞳で見つめてくるから、心の準備がうまく整わない。

 チャンスを逃してしまったら、好きだと言えなそうで、私の心がぐらぐらと揺れ始める。

 体温の高くてがっしりとした手。骨格がしっかりとしていて長い指先。凄く綺麗で。私は課長の手を見つめながら、言葉にする準備をしはじめる。

「……そんなの、前に一度、言ったはずなのに」

 もう一度、見上げると、課長の顔がさっきよりも近くにあって、息が止まりそうになる。

「さっきの訂正してやる。来月、覚悟しとけ」
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