大嫌い。でも…ほんとは好き。(旧題:ラブ・ストリーミング) 番外編
「これは、おまえのせいだから」
「チョコレート持ちこんだ罰ですか?」
「何を言ってる。罰はこれからだ。逃げるなよ?」

 少し、にやりと意地悪く笑みを浮かべる課長に、私は反発しながら、心の火照りが収まりつかず、勝手に想像をしている自分に嫌になったりもして。

 もっとキスして欲しい気持ちがあとになって、じんわりと広がっていった。まるでこのチョコレートみたいにほろ苦く甘く、癖になるような。

「今度は、期待してます」

 私は、今の精一杯を告げて、課長を見つめた。
 課長は何もいわないで、私の頭をぐいと押すように撫でる。

 この会議室を一歩出る方が、ずっと勇気のいることかもしれない。
 頬が熱くて、ドキドキしていて、にやけそうになるのが抑えられなそうだったから。

 私が背を向けてドアを開ける瞬間だった。

「松永」
 課長に呼び止められて、一瞬だけ振り返る。
 なんとなく言いたいことを察して、私は課長の言葉を遮った。

「分かってます。他の誰にも。課長だけです。あーんな大きなの鞄に一個しか入りません」

「そんなことは誰も聞いていない」

 むっと少し照れたような風に見えて、なんだか可愛くて笑った。
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