ガラスの靴をもう一度
そう言うと、雅貴は立ち上がった。
「どこへ行くの?」
「今夜は書斎で寝る」
「え…?じゃあ、私がそっちで寝るよ」
慌てて言うと、雅貴は力無い笑顔を浮かべた。
「萌がベッドで寝ろよ。今夜は、正直萌の事は見損なった。だけど、一つ俺なりに嬉しかったのは…」
「嬉しかったのは?」
「俺がプレゼントした靴、今日は履かなかったんだな」
それだけ言うと、雅貴は書斎へ入って行った。
「雅貴…」
気付いていたんだ。
そうだよ。
だってあれは、ガラスの靴だもん。
雅貴がくれた、私の夢への入口だから。