ガラスの靴をもう一度


今日だって、席外しをしてくれている。

「失礼します」

ドアを開け中へ入ると、パソコンを打つ手を止めた雅貴が、私に優しく顔を向けた。

「どうした、萌?」

二人きりの時は、今までと変わらず接してくれる。

それが嬉しくも切なくもあり、そして苦しくもあった。

「ごめんね雅貴、お昼休憩なのに」

「いや、いいよ。見ての通り仕事だから」

両手を広げる仕草をして、デスクに置かれている資料の山を見せた。

「本当…、たくさんあるのね。休憩、しなくて大丈夫なの?」

このところ、忙しさが増してるんじゃないかな?

何せ、麻生さんが外出している事が多い。

今や、営業部とのやり取りもしていて、麻生さんが忙しいなら、営業さんたちも忙しいからだ。

「心配してくれるのか?」

「そ、そりゃ、普通に心配よ」

< 328 / 494 >

この作品をシェア

pagetop