ガラスの靴をもう一度
今日だって、席外しをしてくれている。
「失礼します」
ドアを開け中へ入ると、パソコンを打つ手を止めた雅貴が、私に優しく顔を向けた。
「どうした、萌?」
二人きりの時は、今までと変わらず接してくれる。
それが嬉しくも切なくもあり、そして苦しくもあった。
「ごめんね雅貴、お昼休憩なのに」
「いや、いいよ。見ての通り仕事だから」
両手を広げる仕草をして、デスクに置かれている資料の山を見せた。
「本当…、たくさんあるのね。休憩、しなくて大丈夫なの?」
このところ、忙しさが増してるんじゃないかな?
何せ、麻生さんが外出している事が多い。
今や、営業部とのやり取りもしていて、麻生さんが忙しいなら、営業さんたちも忙しいからだ。
「心配してくれるのか?」
「そ、そりゃ、普通に心配よ」