ガラスの靴をもう一度
私の言葉に雅貴は首を横に振る。
「それは、萌にとってガラスの靴なんだろ?」
「そうよ。だからよ。だから、これは返さなくちゃ」
中途半端な想いは抱きたくない。
でなければ、別れた意味はないと思うから。
だけど雅貴は、決して手を差し出そうとはしなかった。
「萌、少し落ち着いたら、話しだけでもさせてくれないか?その時でもいいだろ?それを受け取るのは」
「分かったわ…」
あまりの真剣さに、私は手を引っ込めた。
仕方ない、靴は持って帰ろう。
紙袋を持ち直して社長室を出ようてした時、雅貴が後ろから声をかけてきたのだった。
「俺はまだ萌が好きだから」